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『人形の家』ルーマー・ゴッデン
「人形の家」
「人形の家のことを話していたところね。」とトチーがいいました。「それはあんまり大きくはなかったわ。テーブルの上にのるくらいでしたもの。外側はつやつやしたクリーム色のペンキでぬってあって、ツタが描いてあったの。まるでほんものそっくりによく見えたわ。」とトチーはいいました。
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「小鳥のことを考えることりさん」
「それは鳴けたんだわ。」とことりさんがいいました。目は輝いたようでした。「それがどんなふうに鳴いたか、わたしにはわかるわ。」ことりさんの頭の中では、今まで耳にしたことのある歌という歌の一節一節が、小鳥の歌声とまざりあって、といっても、ことりさんはロンドン育ちですから、ほとんどスズメの鳴き声とやさしくふれあって、聞こえるのでした。ことりさんはじぶんでは一つもうたえなかったのですが、そういった歌のかけらがみんな一緒になって頭の中をかけめぐり、まるで陽気なおもちゃの鳥でもうたいそうな歌のしらべを作りあげるように思われました。
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「ピンクのカーペットの部屋の中のことりさん」
ことりさんには、ピンクのじゅうたんの敷いてあるじぶんのへやがありました。毎朝、ことりさんは、羽根ぼうきでそのほこりをはらい、そのあいだ、鳥かごにいるじぶんの鳥が歌いそうな歌を全部自分で歌ってみるのでした。ところがじぶんの何が掃除をし、何が歌をうたうのか、ときどきことりさんにはわからなくなるのでした。
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